まさかの続編!?
今回の主人公は、
ティキ幹部衆のリーダーにして、メタ発言&ツッコミ担当『ディオン』!!
でお送りします。
彼の地の文を書いていくうちにツッコミだらけで、苦労人キャラのイメージが出来てしまったかな。
何だかんだクレムリン軍団とイチャイチャ(?)しています。段落分けしているが、時間軸は同時進行。
ほのぼのギャグ中心に、たまにシリアスと、書きたい話を詰め込んだ総集編的なものとして読んで下さい。
以下いつもの注意事項。
- 口調や性格は公式(メディアミックス)が出していたアニメや漫画も参考にしたが人によっては解釈違いになる可能性あり。例→ディオンとコプターの毒舌や後輩をやたらと可愛がるクランプなど。
- レア社特有のメタ要素とメタ発言、子供向け任天堂ゲームらしく大半の誰もが死なない世界線。そしてプレイヤーからの声を知っている。
- シリーズの発売順に沿って先輩後輩の上下関係あり(勢力問わず)。
- 一部キャラクターの過去話などの捏造。
こちらも公式から明言されていないので独自設定。
創作物のよくある設定として馬鹿には洗脳が効かないとは良く言われているが、リアルは逆パターンらしいので、クリッター共はご存知の通り馬鹿なんで確実に効く。
また洗脳が効かないクレムリンも何体か設定している。
個体差があるかもしれないが、例えばコプターたちが洗脳されなかったのは無敵の敵キャラだからでは無い。
一応タネについては前回の話で明かしているが詳しく話すと長くなるので、今回の話をどうぞ。いつか本ブログで考察して語りたい。現実的な観点から考察するティキ族の洗脳についてね。
前置き失礼しました。それでは本編どうぞ。
前回のあらすじ!
アー、アー、私はティキ族の大ボス・ティキトング様の参謀にして、ティキ幹部衆のリーダー『ディオン』だ。
ティキ族では2番目に偉い者で、頭のアコーディオンを鳴らして動物共を思い通りに操ることが出来る天才である。
……ナニ?これだけではよく分からないだと?
原作リターンズのファクトリーエリア7-Bにて、巨大メカを操縦するニワトリのボス『ドクターチキン』を洗脳し、取り憑いていた者だ。
ステージ終盤まで進めないとお目にかかれないが、本当はティキ族を生み出す重要な仕事を請け負っていたんだぞ。覚えておけ、この情弱!
アー、そんな事より前回のあらすじをだな。
ティキたちの基地であのデブ……キングクルールというクレムリン軍団の大ボスが単身で乗り込んで来て、ティキトング様と言い争いをしていたわけだ。
で、それで終わるはずもなく、結局戦う羽目に。
私は彼らが見えないところで様子を伺っていたが、見ての通り動物を洗脳して取り憑くことしか出来ず、ティキトング様みたいな戦闘能力はない。
だからそのまま加勢しても足手まといでしかなかった。
勿論あのボスワニには洗脳も効かないぞ。ティキたちより強力な洗脳攻撃を持ったティキトング様がやっても無理だったからな。
さらに幹部衆を集めて両手に変身して助けようにも、最終的にはボロ負けになるし……
って、何やってもダメじゃないカ!と諦めかけたが、そこであることを思いつく。
そうだ、あのボスワニには沢山の部下がいたではないかと!筋肉質で腕っぷしも強く、噛み付く力もある雑魚敵が!
生き物界の頂点であるワニ共を沢山操って、数で攻めればいいじゃないかとナ!
こうしてバナナジャングルにて、幹部メンバー総出でクリッターやクラップトラップたちを操ることに成功。
むしろ時間をかけることなく洗脳されるほど頭が悪かったので、容易い、容易い。
戦力はあと数体入れば完璧。
次はクレムリン軍団の上級兵であるクランプとクラッシャを洗脳出来れば、今度こそティキトング様に勝利を与えられる……そう思っていたのだ。
しかし、あるワニと遭遇したことにより状況は一変する。
私の洗脳を無効化した無敵の雑魚敵『コプター』と名乗るクレムリンたち。
だが、見た目は子供だからダウンさせた上に幹部全員で楽器を演奏すれば言う事を聞くはずだと、不意を付いて洗脳したクリッターたちでボコボコにして、追い詰めたのだ。
ククッ、次いでにコイツらも洗脳すれば戦力として使えるしナ!何せ、無敵の雑魚敵だからナ……これは運が良いと。
そう!『それが良くなかった』のダ!
アー、あの時の恐怖は忘れない。
彼らから親分と慕われ、精神力も戦闘力も明らかに強いと確信した、もうひとりのコプターの存在……
『たるジェットレースに登場したコプター』のことを。
まるで子を傷つけたことで親が出てくるよくある展開を生み出してしまったとな。しかもクリッターたちも操っていたから、もうコイツに宣戦布告をしているようなものだと。
このままだと全員ブチ壊される……だから私は彼にやられることを分かって囮を買った。
とりあえず私がやられたら絶対に勝てない相手だと分かって、ティキたちが逃げるはずだと思ったから、ナ……
マア、私の作戦は全部無意味となってコプターたちに反撃されつつ、最終的にはあの大きなふたり組のクレムリンにティキたちが捕らわれたガナ!
茶デブのワニと水色マッチョのワニ。
アー、コイツらこそ次に洗脳しようとしていたクランプとクラッシャなのだろうと……
目覚めの時
で、そこから気を失って気絶したことまでは覚えている。
そういえばクレムリン軍団は敵を捕らえた後、最終的には処刑すると言われていたナ……
いやいや!子供向けゲームにあるまじき行為だと思うだろう?
しかしスーパードンキーコング2のゲームオーバー画面の最後の演出がそう感じ取れると、一部プレイヤーの間でされていたからだ。
流石、スーパードンキーコングシリーズを生み出したレア社。たまに怖い要素をブチ込んでくるのが、この会社の特徴だったからな。
まあ、現在のドンキーコングシリーズではそんな演出は少ないにしろ、今頃酷い目に遭っているに違いない。
こんなことなら、クレムリン軍団なんて洗脳するべきじゃなかった……すまない、みんな。
「ゥ……」
そしてようやく意識が近くなったが、体が動かない。あのコプターに吹っ飛ばされた影響なのか?
しかし、背中の感触は……。何だろう?暖かくて、柔らかい。
まるでツルツルした寝床に寝ているみたいな。それに匂いも、美味しそうなバナナの香りダ……。アー、このままだと気持ちよく寝れそうだナ……
「キャキャ……」
「メ〜」
しかも何かの、話し声が聞こえる。よく耳を澄まして聞いてみると、マラカス共の声と、あとは…… 誰かは分からんがマヌケな声であることは分かる。
もしかして皆、気絶した私をティキたちの基地へ連れ帰ったのか……?もしそうだとしたら、クレムリンから何とかして逃げ切ったのだろうか?
いや、逆にアレらは全て夢の話だったのか?
「オハナ♪ オハナ♪」
「キャキャ、カワイイー!」
「ウンウン、クロマユ!シブイゼ!」
ウン?コイツらは一体何を?しかも何だか、顔がムズムズするぞ。ってことはまたイタズラか。そこでゆっくりと目を開けると、
「オイ、イタズラは止めろ…… ガキンチョ共メ……」
「ア、ディオン様、起キタ〜 オハヨウ〜」
「お前もいたのか、ボンジョ…… それに、ここは……」
「ここは酒場だよ。ドンキーコングの敵対勢力しか入れない特別な場所だ」
「特別ジョ〜」
「そうか、成程。って!誰だお前ハ!」
と後ろから聞き覚えのない声に驚き、振り向くと、木製のバケツを被っている茶色い巨漢のワニが自分を抱きしめていたのだ。
コ、コイツがクランプか……
そして暖かくて柔らかい感触の正体はコイツのお腹だったノカーー!?
あと、やっぱりティキたち全員、クレムリン軍団に捕まっていたではないカ……!しかもそいつはクレムリンのひとり。ボンジョたちが仲良くしている時点で既におかしい。
これには必死に両手で「離せ」と抵抗するが、全くビクともしない。
「駄目だよ、暴れちゃ。病み上がりなんだろう〜?」
「クッ、私を捕らえて、逆にティキたちを洗脳するとハ…… お前は一体……」
「オ、大先輩に向かってお前呼びとは、いい度胸してんなァ後輩」
「ギャー!出ター!化け物ワニー!」
私や筋肉ダルマ共を吹っ飛ばしたあのコプターまでもいたとは。これには叫ぶしかなく、
「ディオン様! 良カッタ、気ガ付イタンデスネ!」
「そしてそのアホ面は何なんダー!ザイロボーン!」
さらに彼のとなりには、私を心配して声を掛けてきたザイロボーン。顔に落書きされた状態で来るもんだから、これには突っ込まざる負えない。
「っていうか、お前も落書きされてんじゃん〜!アヒャ〜、こりゃ面白ェ〜!」
「オソロイダジョ〜!」
「「シャカシャカ、ドッキリ!ダイセイコウ〜!」」
「ス、スミマセン、ディオン様。ボンジョタチ、止メテモ聞カナクテ……」
「あはは、こんなにも個性豊かで可愛い後輩ちゃんたちに囲まれているなんて、おじさんはとっても幸せだ〜」
「グヌヌヌ……」
アー、モウ!何がどうしてこうなっタ!情報量が多すぎて理解とツッコミが追いつかナイィーー!
こうして現実逃避をするべく、また眠りにつくのであった。
【力がみなぎる黒バナナ?】
「……?」
再び目覚めると、ゴングオーとワッキーパイプがクリッターからバナナを貰って食べている。
「オー!! ウマイ!最高ダ!」
「プァ、モグモグ……」
しかし皮が全部黒い。腐っているのかと思うほどに。でも味は相当美味しいようで。
「そういえばコプターは?」
「バナナ食べてそのあと外で……」
「リバース?」
「多分そう!」
クリッターたちによると、あのコプターはバナナを食べたせいで気分が悪くなり既に退場している。恐らく酒で酔っていた悪影響なのだろう。
「甘くて美味しい黒バナナ。君も食べてみないかい?」
とクランプに勧められる。如何にも怪しいが同時にあることを思った。もしかしたらティキたちがクレムリンと仲がいいのもこのバナナの影響なのではないか、と。だったらこの異常さも分かるはずだ。
さらに彼から、
「ただ美味しいだけではないよ。賢いティキ族がこれを食べると強大な力を手にするんだ」
と教えられる。
ククッ、賢いティキ族と言えばこの私!そう言うなら食べるしかないだろう!と黒バナナを一口で食べる。
すると、
「!!」
甘い!それに本当ダ!本当に力がみなぎるゾ!
よーし、今ならと楽器を鳴らす!
「ハイ、ディオン様」
「ティキ族バンザイー」
「オー!! ディオン様!最高ー!」
「「ティキ、サイコウー!」」
アー、素晴らしい!クレムリンだけでなく、ティキたちまでも洗脳出来るとは!
これが、黒バナナの力……!
【参謀対話】
パチパチパチ……
「いやー、素晴らしい演奏だね。流石はティキトングの参謀だ」
「ハ!?」
ただし『クランプのみ』はかかっておらずで。
「ど、どうしてダ。まさかお前もあのコプターたちと一緒で……」
「そのようだね。洗脳に引っかからない体質……とでも言いたいようだけど」
「それ以外にナニが……」
「『ティキトング様のために』。 本当は皆にそうやって言い聞かせているんじゃないかな?」
ナッ!?
何故ティキたちが動物たちに『ティキトング様のために』あれこれしろと操っていたことを知っているんだ……
そうだ。全ては「ティキ族繁栄のために力の源であるバナナを集めて来るのだ」とティキトング様から指示されていた。だからリターンズ本編では群れで活動していないただの野生動物しかいなかったから、彼らを操れることは確実だった。
もし今回のクレムリン軍団みたいに言葉を話せる知性があって何かの勢力に所属していたとしても、クリッターのように頭が馬鹿でボスに対しての忠誠心が低ければ、洗脳してこちらに誘い込むことだって出来る。『寝返り』ってヤツだ。
しかし彼はどうやら違う。見た目は頭の悪そうな顔つきだし、絶対に洗脳されてもおかしくはないはずだったが……
「私はクルール様に従順でね。あの裏切り……クリッターたちも彼に忠誠心が少しでもあれば、あんな目に遭わずに済むだろうに~」
「ヤ、やっぱり……」
「それで、これからどうするんだい?今から洗脳したクリッターたちで私に総攻撃を仕掛けるのかなー?」
「……‼」
余裕の口ぶりで両手を広げて挑発するクランプ。表情は微笑みを浮かべ口調も柔らかいが、一層不気味に感じる……。
初代スーパードンキーコングのクランプのことしか知らなかったのなら、間違いなく戦う選択をしていただろう。
しかし今はやっていけないことだと分かっている。
何故なら身体つきが横にも縦にも大きく、全員で攻撃してもまず効かない防御力。
それにあんなマヌケな見た目に反して、私の行動を見透かすほどの頭の良さだから、洗脳したクレムリンを突撃させても、何とか全員倒すはず。
いや、最も楽な方法が考えついているのなら、洗脳主である私自身を真っ先に殴るだろう。
もしあんな巨大な手で殴られようものなら、体にヒビが入るか最悪全身破壊……例え軽傷で済んでも一生心の傷が残るはず。
死ぬことはないが、タダで済まないことは明白。
つまり、
「いや、攻撃は仕掛けない。ただ私の本気の力を見せたかっただけダ。洗脳こそ、ティキの武器だから……」
「意気地無し、か。まあ、君にしてはそれが妥当かな。……それじゃ、覚悟して貰おうか」
再び目覚めの時
「!! 冷ターーッ!」
と、顔面に何か冷たいものがかけられ目が覚める。
「ンギャ、ゴメンナサイ!ディオン様!」
どうやらザイロボーンが再び寝てしまった私を心配してコップに入った水を持ってきたが、誤ってこぼしてしまったのだろう。
大きなソファ。あのクランプは後ろに……いない、ナ。カウンター席でクラッシャと対面して話しているようだ。
「ア、アノ、凄クウナサレテイタノデ、ソノ、起キタ時ニ、水ヲ……」
「アー『スゴく怖い夢』を見た。でもお前のお陰で目が覚めた。助かったゾ」
焦るザイロボーンを叱ることはなく、悪夢から目覚めさせたことを褒めた上で今の状況を聞くことにした。
状況整理
「あれはだれ?」
クラッシャは、とあるティキを指差しクランプに質問する。
「ゴングオー。声が大きいのが特徴だ。元気いっぱいで見ているこっちも笑顔になるよ」
「君の好きな食べ物はあるかなー?」
「バナナ!! ティキタチノ、命ノミナモトダカラ!」
「バナナかー たまに食べると美味しいよねー」
クロバーたちに囲まれて会話をするゴングオー。ティキたちの中では珍しく物を浮かす魔術が使える奴で、喋る際にはとにかく声が大きいのが特徴だ。
もしかしたらあのクロバーたちとも相性が良いかもしれない。タルに化けた状態から顔を出して大声で突進してくる雑魚敵だからナ。
だから両方とも心臓に悪いがな。
「じゃあ、あっちで寝ているのは?」
「ワッキーパイプ。皆が騒いでいる中よく寝れるよね〜 もしかしたら睡眠のプロかな?」
「グゥ……スゥ……」
「おーい、アレ?全く起きないや」
「しかも落書きされてるし」
クリッターふたりはワッキーパイプを触っているものの、全く起きる気配がない。
ワッキーパイプ。リターンズ本編ではやる気があるタイプだったが、普段基地にいる時にはよく居眠りをしている。
というより、私含めてリターンズ以降に登場していないこともあってか、もう寝ることが大好きな面倒くさがり屋のイメージしかない。
で、その睡眠時間は1日15時間……赤ちゃんカ!しかも周りが騒がしく、お触りで起きない時点で……
ああ、クランプの言う通り睡眠のプロだな。認めたくはないけど。
「__ッテ、コトガアリマシテ……」
「フムフム、そうか。あと水性で良かったゾ」
濡れたタオルで顔の落書きを拭きながら、私が倒れた後の話を聞く。
どうやらザイロボーンによると、クレムリン軍団に捕まったのは本当で、あのクランプにティキたち全員がここに運び込まれた。その時は酒場に灯りがついていない暗い場所だったらしく、彼もコプターの時みたいにボコボコにされるか脅されると思っていたそうな。
しかしクランプにとって、そんな気は毛頭なく、むしろティキたちに出会えたことが嬉しかったようで、そのために自分が経営する酒場に誘って一緒に話をしたかったとか。
誰に対してもフレンドリー!?そして意外と金持ち……本来は彼のマイホームらしいが、数年前に地下を改装して酒場にしたそうだ。まさにホームパーティーエリアだナ。
そのため毎日営業していることはなく、彼の本仕事の都合上、不定期。ただし早朝に連絡をとってくれれば、その日の夜にも開けてくれるようだ。心広すぎカ!
今は共にドンキーコングの敵勢力繋がりではあるが、それでも他勢力。クレムリン軍団とティキ族が原作で接点を持つこともなければ、仲良くなるなんて有り得ない話だ。実際にティキトング様とキングクルールの仲がかなり悪いみたいだし……
でも大ボス同士が仲悪いのを除けば、共に接点を持って仲良くなっている状況が現在進行形で起きてしまっているガナ!
「カディリーモ、最初ハ怯エテイマシタガ、クラッシャ先輩ト、イイ感ジノヨウデス」
「別ニ。アッチガ一方的ニ、絡ンデクルダケダシ」
「私が寝ている間に色々とすまなかったナ、ふたりとも。後で他にも謝っておくとして……」
「ア、ソ、ソノ心配ハ、イラナイト思イマス。皆、クランプ先輩ニ捕マッタ後、クレムリンタチニ、ソノ…… アノコプター先輩ニモ、怯エルコト無ク、一緒ニ楽シンデイタノデ……」
「あんな目に遭ったのに順応が早すぎダロ!」
夢を見る前にボンジョたちが自由奔放にしていたのはそういう理由だったのカ……
ザイロボーンやカディリーには申し訳なかったけど、それ以外はクレムリン軍団に捕まっても悪い考えを持っておらずか。つまり心配する必要もなくて安心したゾ。
「……アノ、ティキガ知ッテイル話ハ、ココマデデスケド、マダ知リタイコトガアルナラ、先輩タチニモ聞イテ来マショウカ?」
「もう理解しタ。わざわざあのワニ共に理由を聞いたところで一緒だしナ」
「デ、デスヨネ……」
それに同じことを聞くのも面倒だからナ。もう一々突っ込むのも疲れるので、今の状況を受け入れよう。
再び?参謀対話
「では逆に問おう。あそこにいる顔に赤と青でペイントされているティキ族は?」
「もちろん、カディちゃんだよ!」
「ハ? カディ、ちゃん……?」
「クラッシャ先輩ガ、ツケテクレタンデスヨ!イイデショ!」
と困惑する私に自慢するカディリーはクラッシャの元へ飛んでいく。
さっきクラッシャのことを嫌がっているアピールをしておきながら、やっぱり懐いているではないカ。しかもふざけたあだ名まで付けられているし。まあ、彼自身が喜んでいるならいいかもしれないが……
さらに、
「これでどうだー!」
「ヘタクソ~」
「アレー!?」
ボンジョを抱えて演奏するクリッターだったが、適当に引いていたため、馬鹿にされているようだ。コプターはため息をつきながら、
「ハア、コプターが教えても全然ダメだな。やっぱり打楽器かなァ」
「ア、ソレナラ、ティキニオ任セ下サイ!」
と今度はザイロボーンがコプターの方へ。そう言えば最初に目覚めた直後コプターと一緒にいたようナ。つまり彼も既に仲良くなってて……
すると、
「やあ、ようやく目が覚めたんだね。ティキ族の参謀ディオン君」
「ク、クランプ!?」
奥のソファに居座っている私の元へクランプが再び来た。相変わらず大きい身体つきダ。むしろあのボスワニより大きいまであるゾ……。
「そんなに驚くことはないだろう~もしかして、ディオンちゃん呼びの方が良かったかな?」
「いや、どちらでも……」
「じゃあディオン君でいいかな。それに君とも話したかったからね」
となりに座り込むクランプ。体重の衝撃がとんでもなかったため、思わず跳ねる。
さらに後ろの頭も優しく触られている。何なんダ、この状況。スゴく、気まずい……
「うん、もう大丈夫みたいだ。試しにあの治療した甲斐があるなあ」
「もしかして、あの時、ティキを、修理していたのですカ……」
「修理ってものじゃないけど、ティキ族のことは既に原作で知っていたから。バナナが力の源だろう?だから回復も出来るんじゃないかなと思って、君の口に詰め込んだだけだ」
「ク!?」
聞きようによっては荒治療だゾ!
でもティキたちがバナナから力を得て誕生し、さらに強化出来ることまで理解が回っているのなら、相当リターンズ原作を知り尽くしているまであるぞ。ストーリーやキャラクター設定より、アクションやステージの作り込みでプレイヤーを楽しませるゲームの中ではな。
「でも君たちが先に手を出したからね。当然の報いだよ」
「言われるまでも、ナイ……」
やはり口調に気遣いがあっても敵キャラクター。同情するほど優しくはなかった。
いや、そんなことより、さっきからスキンシップが……に、においを嗅いでいるのか?動物は、ワニは、これが当たり前ナノカ?
「こうしてティキ族を間近で見れるなんて初めてだ。今までは画面越しでしか把握出来なかったから」
「観察でもしているのカ? ティキは木でしか出来ていないし、においもただの……」
「あ、ゴメンね!おじさん、木製のバケツを集めて被るのが好きだから、つい色んな木の香りを嗅ぎたくなってくるんだよ~」
「どういう趣味なんダ!」
アー、これも見ようによっては、コイツが変態に見えるゾ。
マア、ティキたちは無機物の楽器だし、匂いを嗅ごうが、抱きしめようが、やましいことは感じないけどナ!むしろ楽器を沢山演奏して愛してくれれば、作られた甲斐もあるからナ!
そう思っていると、
「天才デス!コプター先輩ノ演奏!アンコール大歓迎デスヨ!」
「勝手に指揮るなし、もう腕が疲れたんだぞ…… でも後輩が褒めてくれるなら喜んで叩かせて貰おうか!」
疲れているコプターがザイロボーンを叩いて演奏している。
って、無茶苦茶上手くないカ!? ザイロボーンが洗脳して無理矢理弾かせている……はずもないよな。頭も良いからもしかして多才?プロペラを両手で扱っている影響もあるだろうナ。
それにしても普段から口数が少なく緊張して話すザイロボーンの気分を逆に高ぶらせるとは…… まるでプロの音楽家だナ。
「こんな聞き心地のいい木琴の演奏は初めてダ…… あの戦いも本気を出していたんだなと思うと、何でも負けなしだナ」
「それはどうかな。彼、戦闘では弱い相手に手加減することが多いから」
「ハ、あ、あれで手加減していたのカ……」
「そうだよ。もしあの時の相手が私だったら本気で全員倒していたかもしれないし……」
「!?」
そう告げてこちらを見た際のクランプの表情。明らかに一瞬、目が笑っていなかったことに驚愕する。
しかし私の驚いた表情に気付いたのか再び目元も笑いながら、
「あはは、当然クリッターたちをだよ~ 裏切り者には容赦しないからね。多分、私が本気を出しすぎちゃったら君たちも巻き込まれたかもしれないけど」
「どっちなんダ……」
まるであの夢で見た恐怖感。あのコプターとは違う何かガ……
彼とは真逆で穏やかな雰囲気。今でもティキたちに対して優しいのだが、やはりボスワニの参謀なのか裏切り者には絶対に容赦しない恐ろしさ……。いや、むしろ普段から口調や表情が読めず何を考えているのか、どんな行動をするのかが理解出来ないからこそ恐ろしいかもしれない。
これも、たるジェットレースで追加されたキャラクター設定の『おとぼけな』性格故なのか……
「それにこんな可愛い後輩ちゃんたちを傷つけたくないよ~ これからも仲良くしてね、ディオン君!」
再びクランプに抱きしめられる。
もしコイツを怒らせたり、裏切ったりしたら最悪ぶち壊されてもおかしくはない。だからこの舞台裏では彼の後輩として仲良くなっておこう。それが一番だ。
ティキはディオンだ!
「なになに、ふたりでなに話してるんだ〜?」
クラッシャが声をかけてくる。
「何でもない。ただの参謀同士の会話だよ」
とクランプはそう言いつつ立ち上がりカウンターの方へ向かう。またカディリーもさっきの光景を見ていたのか、
「デモ、ディオン様、サッキ、クランプ先輩ニ抱カレテ……」
「ワ、私が洗脳してやらせた訳じゃないからナ!」
「洗脳シタッテ思ッテナイデスヨ……」
「ア……」
早とちりだったみたいだ。
しかしクラッシャは私のことをジロジロと見て、頭に付いている羽を触ってくる。どうしたのだろうか? まさか彼もクランプと同じく、そういう趣味を……?
「ハネちゃん、可愛いな〜」
「あまり引っ張らないでくれ。それに音は出ないからな……」
「そうか。じゃあ、クウちゃんだな!」
「? どういう意味だ?」
「お前の頭が空気入れだからだよ」
「って、コレは空気入れジャナーイ!楽器ダ!」
「わあー、本当だ、音鳴ってる〜」
と興味津々な顔で私の頭を手で何度も押すクラッシャ。
「アーー!力強すぎダァーー!」
しかし加減が分からないのか、頭が重いし、痛すぎルーー!
「ディオン様モ演奏シマスカ!」
「これは演奏じゃないゾーー!ザイロボーン!」
「全く。これじゃ頭にプロペラがついたコプターのことをプロちゃんと言っているのと同じであります。容姿であだ名を付けられて嫌な奴だっているのでありますよ」
「あ、たしかに、ゴメン……」
とコプターに注意され、手を放し、私に頭を下げて謝るクラッシャ。
それにコプター、分かっているではないカ。凶暴なワニだと思っていたけど、やっぱり相手の気持ちを考えているのだナ……
「それにティキ族は楽器をモチーフにしたキャラクターだ。ここにいる奴らだと、ディオンはアコーディオン、カディリーはカリンバ、ザイロボーンは木琴の一種であるザイロフォンと…… まあ、モチーフ名を一部変えて名付けられた奴らが大半だが、それでもコイツは覚えやすいぞ。そのまま楽器の名前を抜き取っただけだからな」
な、なんと、素晴らしいノカ!ティキたちのことをこんなにもすぐに理解できるなんて!この頭の良さは私に並ぶノカ!?
「アコーディオンのディオン。お、これなら簡単かも!」
「それにアコーディオンって何ですかね?」
「名前だけじゃよく分からないや~」
「なんでダー!」
ただしクリッター共は今だに覚えられずと言った感じだが。
まあ、こんなヤツらがわざわざ私の名前なんて覚えなくても良いけどナ!馬鹿だし!
「ケッ、相変わらずの頭の悪さだなァ〜 画像見たら理解出来るんじゃないか~?」
コプターは持参していたノートパソコンでアコーディオンの画像をクリッターたちに見せると、
「あーこれか!」
「確かに見たことあるや!」
「オラたちも見せてー」
私より実物の楽器に釘付けかよ。でもお陰で助かった……
「貴方は後輩想いなんだナ……」
「別にー、当然のことをしただけだがー」
「……」
「でも空気入れって言われたらマジでそう見えるなァ、クウちゃん?」
「ンナーーッ!?」
アー、クソ!相手を思いやる常識ワニだと思ったのに、結局悪役らしく誰かを馬鹿にするノカーー!
グヌヌヌ、もしコイツを洗脳出来れば「ディオン様、ディオン様」と呼ばせて跪かせ、一生こき使ってやるのにーー!
謝罪
いや、その前に最も言うことがあるんだった。あの件だ。
「アー、そんなコトより、今回は貴方の部下を傷つけるだけでなく、貴方のことも知識不足で言い間違えてしまい誠に……」
「って、何でコプターにぶっ飛ばされた被害者が謝るんだよ〜! 悪い事をするのが主な敵キャラクターのクセに〜?」
「いやいや、実際に貴方をブチギレさせましたカラ!」
っていうか、こっちから仕掛けたんだし、謝るのが常識ってものだろう……。
しかもあの時は焦って言い間違えるという失態を犯してしまったし。
一応はティキ族で二番目に偉い参謀だし、貴方の事も調べていたんだゾ……。ティキたちとは違い、たるジェットレースで個性付けされたキャラクターとして再登場していたことを。
けど、調べたのは10年以上前だったから、その時すっかり忘れてしまったが……。
「アァ? ブチギレ?たるジェットレースはドンキーコングシリーズの中でマイナーな作品だ。コプターが再登場していることを知らなくて当たり前だし、無理もないからなァ」
「エ……でも」
「それは気にしてないから。まあ、確かに子分を傷つけたことには怒っていたけど、そこまでいってねェよって感じ。お前たちもそうだろ?」
私のことを怒ることなく、となりにいる小さなコプターたちに問うコプター。
「サー! 一応自分たちの失態もあるのでクリッターたちに気づけるよう、もっと視野を広げるべきでありました」
「クロバーたちみたいに隠れて様子を伺うべきでありました」
その返答は意外なものであった。これには彼らにも再び問いただし、
「も、もしかして貴方たちも怒っていないの、デスカ?」
「勿論でありますよ。いやー、不意打ちとは恐れいったんだぞー」
「そうであります。むしろティキ族じゃなくて、あの裏切り者にボコされたって感じでー」
「エッ、それってオレさまたちのこと……」
「って、当たり前だろうがー!この馬鹿が!」
と逆にクリッターたちに怒るコプター。これには予想外すぎてクリッターたちも焦りながら、
「あれは洗脳されていたから仕方ない話じゃないですかあ〜!」
「そうそう!ノーカン、ノーカン!」
「なわけあるか!ティキ族の洗脳に引っかかった時点で終わりなんだよ!所詮は『クルール様に従うだけ』の下っ端、いや、頭空っぽの脳筋ワニてかァ〜? 良かったなァ、相手がこのコプターで。もしこれがクルール様だったら…… 全員無事では済まなかったんだぞ」
これには「ヒエ……」と恐怖するクリッターたち。
それにしても先程からクリッターたちに対しての罵倒が凄すぎる。私もティキたちに対して毒舌ではあるが、まさかここまでとは。まあ、実際に無理矢理とはいえ、クレムリンを裏切って、こっち側に付いていたから妥当ではあるが。
アレ? このコプターがあの強さだったら……?
あのボスワニはそれ以上の強さを持っているってことになるノカ!?
だとしたら今頃キングクルールに挑んでいたのなら、全員、間違いなく瞬殺されていたことだろう。
さっきのクランプの発言といい、ワニという生き物は本当に恐ろしい。イ、挑まなくて良カッタ……
「でも、その後にお前たちがコプターにビビり散らして、慌てふためく恐怖顔の方が勝っていたからなァ」
「? それって……」
「本気ですぐ逃げると思ったらさ、悪あがきを繰り出してくる。無駄なことなのに。で、そこから段々興奮してきて、ひたすら暴れまくった……ってわけ。久しぶりに敵キャラクターやってて良かった1日だったんだぞ〜」
コプターはそう笑顔で言うと、腹を押さえつつ「アヒャヒャヒャ」と特徴的な笑い声を出す。本当にその姿はヒールを完璧にやりきって楽しんだ悪役そのものである。
これには私だけでなくカディリーもザイロボーンも怯え、
「ヤッパリ凶暴ワニ!狂ッテイルゾ……!!」
「ア、アノ時、ティキハ1番前ダッタノデ、本気デ、コ、壊サレルカト思イマシタヨ……」
アー、同情するゾ、ふたりとも。
そしてもう間違ってもコイツに喧嘩を売ることは絶対に止めよう。
怒らせると怖いクレムリン?
「あっ、そう言えば。ブチギレだったらクランプの方が怖いと思うな〜」
とクラッシャに言われる。あんな穏やかな奴が本当にキレたことなんてあったのカ……?
「一カ月前とか大変でしたよね。何でも基地で暴れていたクラッジを止める時に」
「しかも止めに入ったクルールさまを傷つけるだけでなく、参謀のお気に入りのバケツを破壊してブチギレたって……」
「なーに、ただ腹パン一発で黙らせただけだ。基地は破壊されずに済んだことからクルール様には賞賛されたけど、クラッジはあれから3日も起き上がれなかったし…… 今でも反省しているよ。手加減は難しいなあと」
その大きな手でパンチをしたってことカ。しかも最近の話とは、恐ろしや……
本当にただ手加減出来なかっただけなのか、それとも下の者に対しての罰なのか。とにかく彼を怒らせると確実にヤバいことは分かった。
画面の前にいる良い子のみんなは、間違っても大きい人を怒らせるような真似をしちゃダメだぞ。
「参謀、バケツの後ろに落書きされてますぜ……」
「あ、本当だ、可愛いな~!」
「ギャー!なんてことしてくれんダ!お前たち!」
と、マラカス共を叱る。しかし彼らは揃って頭を振りながら、
「「ソレ、ボンジョガ、カイタヨ!」」
「ハ?」
「バラサレタ〜 逃ゲロ〜」
「逃げるナーー!この大バカンジョー!」
これにはボンジョを怒鳴る。しかしクランプは全く気にせずにバケツを脱いで落書きを確認すると、
「大丈夫だよ、替えのバケツはいくらでもあるから。そしてボンジョ君は絵が上手いね〜 記念に飾ろうかな〜」
「ポジティブだナ!怒るかと思ったゾ!」
「こんなことで怒ったりしないよ。私はクルール様に忠誠なんだ。裏切り者だけでなく、傷つける者にも容赦しない。それが参謀の役目だから」
「ア……」
やはりボスへの忠誠心はあったカ……むしろ私より相当強いと見た。
「特にクルールさまを傷付けた時の参謀はすえ恐ろしいからなあ……」
「むしろクルールさまに毎日怒られる方が辛いぜ」
「それはサボってるからだろう~ 手前らも、もう少しクルール様に心酔してもいいのに。無理な話だけどなァ」
「デモ、ワニハ、クルールサマ、大好キワニ!」
「愛!だよね!オレも見習おう!」
参謀クランプとコプターを知る
「ちょっと失礼する。皆が食える食べ物を持ってくるよ〜」
と、食べ物を取りに一階へ上がるクランプ。
そういえばあのボスワニは、部下の扱いがこちらとは真逆だと聞いたことがある。特に裏切ることがあるなら即始末するほどで、粛清に関しては徹底しているからだ。
だからほとんどのクレムリンは冷酷非情なボスを恐れ、無理に従っている他ない。
そんなボスに忠誠を誓えるクランプの度胸。一体どこから……?
でも、
「私みたいにボスを心酔するほどの忠誠心。もしかしたら彼とは気が合うかもしれないナ……」
「ケッ、他勢力の後輩ごときが。クランプ先輩と仲良くなろうなんて18年早い!」
ボソッと呟いた途端に、コプターが指差してきた。
スーパードンキーコングシリーズでは接点が無かったにしろ、後のたるジェットレースで共に再登場した影響で知り合っていたのか?
しかもその後、完全に出番を失った立場同士とも言えるしな……
これにはわざと煽てる感じにしつつ、
「詳しいのですカ!コプター先輩!ティキにも教えて欲しいです」
「……! ん、まあ、最近は共に仕事を務めることが多いからな」
「ちなみにオレもクランプのこと知っているよ〜 昔バディ仲間だったし」
「クラッシャ先輩もカ……」
とりあえず今はクランプがいないので、彼らの話を聞くことにした。
「さんぼう……ってよく分からないけど、とにかくスゴイ立場で、とてもしっかり者なんだ。クルールさまのために毎日がんばっているし、仲間にも良いやつだ。そうそう!特に後輩と子どもにはスゴくやさしいんだよ。あと、料理を作るのも上手くて、とてもおいしくて、何度もおかわりするほどに……」
「兄貴は食いしん坊ですねえー。オレさまたちもそうだけど」
「ていうか、食堂にも別のクランプが働いているしなあ」
「64のクランプだよー!オラたちも毎日通っているよー」
「クランプノ作ル、ゴハン、オイシイワニ!」
彼が後輩想いで料理上手なのは分かったが、もう途中から食べ物の話しかしていないじゃないカ…… 魚介類、甲殻類、哺乳類……と、何でも食べるワニだからなのカ?
「相変わらずだな……もっと無いか? ほら、クランプ参謀との初めての出会いとか?」
とクラッシャたちにクランプとの出会い話を聞こうとするコプター。
それ、ティキも気になるナ……。特にクラッシャは彼と過去にバディを組んでいて今でもタメ口で話す感じ、出会いの思い出もあるはずだから。
「うーん、わすれちゃった」
「オレさまも」
「ワニモ」
「忘れんなヨ!初代スーパードンキーコングで初登場したキャラクター同士だろう!」
と彼らにツッコミを入れる。しかしコプターは指摘することなく話を進め、
「フーン。でもこのコプターはよく覚えているぞ。初めてクレムリン島へ訪れた際、右も左も分からない中で出会ったのが、あの方だったからな」
「それは、たるジェットレースの頃の話ですカ……?」
「ああ、初めは馴染めない場所だったが、それでも自分が何かあったときや悩んでいる時には真っ先に相談に乗ってくれて。特にコプターのことをひとりの後輩として気に入っていることを知ってからは、次第に意気投合してな……。マア、日はそんなに経っていたかったけどなァ~、早くて一日って感じー」
真面目に話しても、結局は軽くジョークを入れるコプター。こ、こんなにもすぐ仲良くなれたんダ……
元々クレミス島に住んでいたコプターだから、クレムリン島という初めて訪れた場所に戸惑うもの無理はない。
そんなクレムリンを積極的に迎えて、最終的には信頼を獲得するまで丁寧に接するなんて。ボスワニの参謀としてもいい仕事っぷりだナ。
「あの彼とは、最近仕事を一緒にすることが多いと聞きましたケド……」
「そうだな。一応このコプター、クレミス島でバロンクルール様の参謀だったから。お前ら参謀同士だからー、って、今は事務系どころか、クルール様の世話まで分担して行うんだぞ。前まではクランプ参謀ひとりでやっていたみたいだが」
「ブラック企業カ!」
「オレさまたちクリッターもたくさんいるのに、なんでやらせてくれないんですかねえ」
「そりゃァ、てめえらが下っ端だからだろう~ せめて上級兵になってから言えよ、永遠の雑魚キャラが」
「グサッー!ひどいぜ~」
なんと辛辣!でも言いたいことは分かるゾ、コプター。
馬鹿が多い下っ端のクリッターたちでやらすよりか、優秀なクレムリンをひとり、ふたりでやらした方が効率がいいんだろう。だからこそ参謀職に務めさせている。それほどまでにあのボスワニはクランプを相当信頼していると見受けられる。
マア、それはコプターもそうだがナ……。まさか彼も参謀だったとは。
「でもあの時は派遣の雇用契約だったからレース終了後は故郷に帰った。本当ならもっといたかったけどクルール様の気づかいを無駄に出来んかったからな」
「クレミス島生まれは島を離れるだけで体調を崩すのでありますから」
「意外に優しいのだナ!?」
常に冷酷なボスワニかと思いきや、優秀な部下の身体を気遣えることに驚く。
「しかしクルール様が用意した特殊訓練やレース本番は過酷だったがな。今は普通に慣れているが~」
「!?」
ぜ、全然優しくなかっタ……。逆にそれを乗り越えて慣れるコイツの心身も、ある意味尋常じゃないが。
一方で、
「それよりハケンの、こようけいやくって、なんですかねえ?」
「決まった日数で働いて最終日に達したら、その仕事が終わるって意味であります」
「じゃあ、遊び放題じゃないか!うらやましいぜ~」
「ただしその後は給料なしでありますよ」
「えー!? そりゃ困る!」
「「馬鹿なのでありますか!」」
こっちは漫才かヨ!!しかも子供のコプターたちにまで馬鹿って言われているし、このクリッター共は。
「ケッ、馬鹿な下っ端共に敬語は不要だぞ、お前たち」
「でもこの後は戻って来なかったよね、コプター」
「それ、今聞くのでありますか、クラッシャ先輩……」
「アレ?ダメだったか?」
言ってはいけない一言だったのか、クラッシャに呆れた表情をするコプター。不味い、このままでは場の空気ガ……
「……サー、クレミス島のクレムリン、仲間だし、家族愛も強いから。だから心配されるのもアレだし、仕方なくであります」
「ワー、オレと一緒だー!」
「兄貴の心配は子どもだけでしょうよ~」
ホ、どうやら違う意味で呆れていたようだ。
「あの後クレミス島に戻って色々考えたけどな。本当ならクルール様がいるクレムリン島に顔でも見せに行こうとは思ったが、あれからクレムリン軍団がゲームでの出番がなくなったし、わざわざコプターが出向いても無意味だと思った。それどころかクルール様や仲間以外に忘れられていると薄々感づいて来てな……」
コプターは声を小さくしながら、顔を伏せる。
また思い出した。そう言えば、このコプター、スマブラでもフィギュアなどで登場すらしていなかったナ……。
クリッターやクラップトラップは、よくゲストで出ているからドンキーコングの敵キャラクターを詳しく知らないゲーマーにも印象に残るが、彼は…… たるジェットレースを最後に18年も登場すらしていないし。
マア、それはクランプも……って、このふたり色々と共通点多すぎないカ!
しかしコプターは再び顔を上げてニヤリとしながら、
「で、そんな悩んでいる時に、クランプ参謀から『またクレムリン島へ来て一緒に仕事をしないか?』って誘われたんだぞ~!クルール様かと思ったら、まさか彼に誘われるとはなァ」
「え!そうだったの!クリッターなんて1ヶ月で忘れていたのに~」
「それはもう言わないで下せえ、兄貴……」
「でも彼は貴方のことを相当信頼していたのですネ……」
「勿論だ!彼と1番付き合いが長いクレミス島のクレムリン代表として言ってやる。こんなにも素晴らしい先輩クレムリンはいない。だからコプターも一後輩として今後を支えようと再びクレムリン島に戻ろうと決めたし。元々はクルール様第一だったけど、最高の先輩に仕えるのも悪くないってな!」
アー、クラッシャたちとは違った最高の過去話かヨ。
ただ仲の良いだけではなかったのだな。誰かを馬鹿して煽るコプターがこれだけクランプのことを評価しているのなら、相当な実力者と見られるか。
あとクレミス島……スーパードンキーコング3のクレムリン軍団といえば、一部のプレイヤーから「ワニらしくない」とか「気持ち悪いデザイン」とか、当時酷評されていたらしいからナ。……後者は今だとティキたちにも当てはまるが。
そんなクレムリンを忘れず、ティキたちが他勢力にも関わらず全てを歓迎し、愛するその姿勢……
流石スーパードンキーコングシリーズの始まりである敵キャラクターの大先輩だナ!
みんなでバナナを食べよう!
「やあ、お待たせ!」
どうやら最高の大先輩であるクランプが上機嫌で下に降りてきたようだ。見た目は普通の木箱を持って来たが、中身はなんだろうか?
アレ、この甘い匂いは、まさか……
「「バナナダ!」」
「当たりだよ~!カディちゃんも好物だろう~?」
「モチロン!食ベル!」
ティキたちが早くもバナナに反応を示すとは。これにクランプは箱を開けて中身を見せると大量のバナナが。彼らは早速、皮ごとバナナを食べる。
「オー!! ウマイ!最高ダ!」
「プァ、モグモグ……」
「黒イブツブツガアル。タ、食ベテモ、大丈夫ナンデショウカ……」
カディリーたちが美味しそうに食べる中、不安そうにバナナを見つめるザイロボーンにクランプは、
「心配はいらないよ。これは『シュガースポット』といってバナナの皮に多くついているほど中身が熟している証拠で、とても甘いんだ。だから房を取った段階で放置していたんだよ」
とバナナのことを解説する。シュガースポット、という初めて聞く単語に戸惑うが、とりあえずそれが多いほど甘いそうで。
しかしまさかバナナに黒い斑点が付いていたら熟している証拠とは。普段からバナナは皮が黄色いイメージしか染みついていなかったから、これは盲点だったナ……
「デ、デハ、頂キマス!」
「クランプ、オレにも5本ちょうだい~」
「いいよ~ 君たちも食べてくれて構わないよ」
「エー、ティキ族にゆずって下させえよ」
「それに酒でハラがふくれているのにですかい……」
「酒を飲んでいるなら丁度いいだろう。胃もたれや二日酔いを防げるよ~」
「じゃあいただきますぜ!」
皆、盛り上がっているな。ドンキーコングシリーズと言えばバナナ、なところもあるし。原作ではドンキーコングから盗んでいる感じだったが。
私も食べよう。そのままも良いが、
「コプター君は?」
「サー、固形はどうも…… 潰してバナナジュースにしてもいいでありますか?」
「お安い御用さ!ミルクも加えてミキサーにシェイクだ!」
アー、バナナジュースも捨て難い。何だかティキトング様を思い出すナ…… ウン?
クラッシャの近くにあるテーブルを見ると、何やら黒いモノが。
アレは…… 夢に出てきた『黒バナナ』ではないカ!あのバナナ以上に真っ黒だし、きっと食べるとスゴく甘いどころか、もしや、力がみなぎるのでは!
「バナナよ!ティキに力を与えてクレ!」
と、そのバナナを手にして、かじりついた瞬間、
「ウゲーー!」
口の中に入れたものの、あまりのクソ不味さにひっくり返ってしまう。
「リー!? ディオン様ガ倒レター!?」
「コ、コレハ、毒バナナ、ナノデショウカ!?」
ド、毒なのカ……? それに口の中ガ、ビリビリしているし……
「ダレだ〜?黒バナナなんて置いたバカは〜?」
クラッシャは私が食べて半分になった黒バナナを見せて犯人捜しを始める。
「知りませんよ!クラッシャ兄貴じゃないですかね!」
「ていうか、オレさまたちならそのまま捨てるし……」
「うーん、あ!1ヶ月前にポケットに入れてたおやつのバナナ!さっき気づいて食べようと置いてたんだった!」
「バカだー」
「バカアニキワニ!」
「ディオン様ニ変ナモノ食べサセナイデ下サイ!」
クーー!てことは、ただの『腐ったバナナ』だったのカ!あと犯人はお前カ!クラッシャ!
じゃあ黒バナナで力が手に入っていたのは…… ゆ、夢の中だけの話だったってことカ……って、普通バナナがこんな状態になっていたら確実に傷んでいてもおかしくないのに自分のバカァ……
「フーン、無機物のくせに味覚機能もあるのか。興味深いなァ」
「でもクラッシャみたいに腐ったものを食べ慣れていないみたいだよ。もし良かったら口直しにバナナジュースはどうだい?」
そこでクランプは動けない私を再び抱いて、今コプターが飲んでいる手作りのバナナジュースをストローで飲まそうとしてきたので、
「もう好きにしてクレ……」
と彼に身を任せ、またもや眠りにつくのだった。
おまけの後日談
「一名、ディオン入ります」
「やあ、また来てくれたんだね!ディオン君!」
「ア、エ……」
「会えて嬉しいよ〜、何か飲みたいものはあるかな?」
「……バナナジュース。先日飲んだ味が忘れなくて…… また作ってくれませんか、クランプ先輩!」
こうしてディオンはクランプのことを恐れると同時に尊敬するようになったとさ。